ネット上で悪質な書き込みの被害に遭って、悩みを抱えている方は多いです。
実際、悪質な書き込みによって風評被害を受けたり、個人情報が流失するなど、社会問題になる事件も多発しています。
そのため、ネット上で書かれた悪質な書き込みを、削除したいと考えている方は少なくありません。
しかし、ネット上で書き込まれた悪質な書き込みを削除するためには、複雑な手続きを行う必要があります。
したがって、悪質な書き込みの削除を試みる場合は、その方法や注意点をよく理解しておくことが重要です。
そこで、この記事では、悪質な書き込みを削除する方法や注意点について詳しく解説していきます。
悪質な書き込みの削除を検討しているなら、この記事を参考にしてみてください。
ネット上の悪質な書き込みを削除すべき理由とは
ネット上の悪質な書き込みを削除すべき理由としては、以下の2つの理由が挙げられます。
- 誹謗中傷問題が個人情報の漏洩につながる可能性がある
- 企業の評判の低下などの影響がある
例えば、個人が受けたインターネット上の誹謗中傷を放置しておくと、誹謗中傷は収まるどころか、本名や生年月日、住所、職場などが特定され、掲示板やSNSで晒される可能性があります。
実際に、2019年8月に茨城県で発生した煽り運転事件では、無関係の一般女性が犯人に仕立てあげられ、そのデマ情報がSNSで拡散し、実名と写真が晒されました。
(出典:デマ拡散元市議に賠償命令 あおり運転で「同乗の女」: 日本経済新聞)
一方で、企業の場合も、悪質な書き込みを放置しておくことで、不確かな情報が拡散され、評判が悪くなる可能性があります。
例えば、SNSや掲示板に「パワハラ会社」などと、書き込みがされる事例です。
上記のようなデマが拡散してしまうと、会社の評判が落ちるだけでなく、新入社員の採用が難しくなるなどの不利益を被ってしまいかねません。
このように、悪質な書き込みを削除せずに放置をすることで、事態がより悪化していく可能性があるため、悪質な書き込みを見つけたら削除することが重要です。
ネット上の悪質な書き込みを削除したいときの5つの対応
インターネットやSNS・掲示板で書き込まれた悪質な書き込みは削除できます。
例えば、書き込みがされたSNS・掲示板の削除依頼フォームから管理者に削除依頼をすることで削除できる可能性があります。
ただし、適切に対処を行わないと、削除できないため、悪質な書き込みをされたときの対処法について、よく理解しておくことが重要です。
そのため、ここではネット上の悪質な書き込みを削除したいときの5つの対応について解説していきます。
発信者と直接交渉する
悪質な書き込みを行った発信者と直接交渉をすることで、削除してもらえる可能性があります。
ただし、発信者が特定できており、発信者に対してメッセージを送れる状態でないと、当然ですが直接交渉することは不可能です。
また、交渉を行うことで相手がさらに誹謗中傷を強めてくる可能性もあるので、基本的にはおすすめできません。
削除依頼フォームなどから管理者に削除依頼する
SNS・掲示板の削除依頼フォームなどから管理者に削除依頼することで、悪質な書き込みを削除できる可能性があります。
ただし、削除依頼をする際は、具体的にどういった書き込みが自身の権利を侵害しており、どのように規約に違反しているかを、詳細に記載することが必要です。
ちなみに、管理者に削除依頼をする対処法は、早ければ数日で対応してくれる場合もありますが、管理者によっては連絡しても返信がなく放置される場合もあります。
送信防止措置依頼
送信防止措置とは、依頼されたSNS・掲示板の管理者が、該当する悪質な書き込みを削除することです。
削除依頼フォームから悪質な書き込みの削除依頼をしても、対応してもらえなかった場合は、送信防止措置依頼を行う必要があります。
ちなみに、送信防止措置依頼に必要なフォーマットなどは、一般社団法人テレコムサービス協会で公開されているので、確認してください。
(参考:プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会 | 一般社団法人テレコムサービス協会)
なお、依頼する場合には侵害された権利など、依頼する理由について詳細に記載する必要があるので、注意が必要です。
公的な機関に相談して削除依頼をしてもらう
公的な機関に悪質な書き込みがされたことを相談して、削除依頼をしてもらう方法もあります。
しかし、相手が特定できていない場合には、助言だけにとどまることが多いため、期待のしすぎには注意が必要です。
インターネット人権相談受付窓口
公的機関の中では、法務省が設置している「インターネット人権相談受付窓口」がおすすめです。
加害者が特定できている場合、加害者に対して改善の要求や削除依頼を行なってくれます。
また、加害者が特定できていない場合も、法律上の助言や関係機関を紹介してもらうことが可能です。
ちなみに、相談は、インターネット人権相談受付窓口ホームページから、個人情報と悪質な書き込みについての内容を記入して送信することでできます。
サイバー犯罪相談窓口
各都道府県警察本部にある「サイバー犯罪相談窓口」でも、悪質な書き込みについての相談が可能です。
相談することで、削除依頼の方法などについてのアドバイスをしてくれます。
ただし、犯罪性がある場合以外は、警察署が直接悪質な書き込みを行った人との削除交渉を行なってくれるわけではありません。
基本的には、アドバイスだけにとどまることが多いので、注意が必要です。
なお、相談する際は、以下の相談リンクから住所のある地域の警察署を選択することで、メールまたは電話で相談できます。
弁護士に相談する
SNS・掲示板の管理者が削除に応じてくれない場合には、弁護士にネット上の悪質な書き込みの削除依頼をすることをおすすめします。
弁護士から削除依頼をすることで、管理者が削除に応じてくれる可能性が高まるためです。
ちなみに、削除依頼を行ったにもかかわらず、相手が任意に応じない場合には、削除の仮処分を裁判所に申し立てることで、削除できる可能性があります。
弁護士が動いていることがわかると書き込みが削除されることが多い
悪質な書き込みを行った個人を特定するために、発信者情報開示請求を行う場合は、書き込みを行った人が、そのプロセスの中で自発的に書き込みを削除することも多いです。
発信者情報開示請求を行うと、SNS・掲示板の管理者やプロバイダーが書き込みを行った本人に対して連絡を入れることがあるためです。
連絡が来ることで、書き込みを行った本人自身が、危機感を感じて削除することは珍しくありません。
逆SEOを行う
逆SEOとは、Googleなどで検索されにくくするための対策のことです。
該当するキーワードで検索を行った際に、誹謗中傷を上位表示させないように、意図するサイトを上位表示させるための対策を打ちます。
ただし、逆SEO対策では書き込み自体の削除はできません。
とはいえ、悪質な書き込みが拡散されるという被害の軽減にはつながります。
書き込みを行った個人の特定に必要な発信者情報開示請求の要件と手順
SNS・掲示板の管理者が、書き込みを行った人物の住所や氏名を持ち合わせている場合は、発信者情報開示請求を行い、管理者と交渉することで特定が可能です。
ただし、SNS・掲示板の管理者は、任意の発信者情報開示請求には、あまり積極的ではありません。
任意で個人情報を開示してしまうと、SNS・掲示板の管理者も発信者から訴えられる可能性があるためです。
また、SNS・掲示板の管理者自身が、発信者情報を持ち合わせていないケースも考えられます。
そういった場合は、SNS・掲示板の管理者に対しては、IPアドレスの開示請求を行い、その後プロバイダーに対して発信者情報開示請求を行うことが必要になります。
発信者情報開示の仮処分の要件
発信者情報開示の仮処分が認められるのは、権利や利益が侵害されている場合に限られます。
つまり、ただ単に不快になる書き込みがされているだけでは、発信者情報開示の仮処分は認められません。
ちなみに、悪質な書き込みによって侵害される代表的な権利や利益には、以下の4つがあります。
- 名誉権
- プライバシー権
- 著作権
- 商標権
上記の権利を侵害している場合には、発信者情報開示の仮処分が認められる可能性が高いです。
SNS・掲示板の管理者に対するIPアドレス開示の仮処分の申し立てを行う
SNS・掲示板の管理者が、悪質な書き込みを行った個人を特定できる情報を保有していない場合や、交渉に応じてもらえない場合には、SNS・掲示板の管理者にIPアドレスとタイムスタンプを開示してもらうための仮処分の申立を行います。
悪質な書き込みを行った発信者が書き込みをした際に利用した、プロバイダーを特定する必要があるためです。
プロバイダーは、その悪質な書き込みを行った個人と契約をしているはずですので、その個人を特定できる情報を保有していることが多いのです。
ただし、この際、プロバイダーによるアクセスログの保存期間が経過する前に、IPアドレスの開示請求をしなければなりません。
一般的に、アクセスログの保存期間は、3ヶ月程度に設定されていることが多いため、できる限り急ぐ必要があります。
ですので、IPアドレス開示の訴訟提起ではなく、短期間で決定の出る仮処分の申し立てを行うのです。
プロバイダーに対するIPアドレスに基づく発信者情報開示の裁判を行う
SNSやサイトの管理者からIPアドレスが開示されたら、プロバイダーに対してIPアドレスに基づく発信者情報開示請求を行います。
しかし、SNS・掲示板の管理者と同様に、任意に応じてくれる可能性は高くありません。
このため、発信者情報開示請求の訴訟を提起します。
この発信者情報開示請求訴訟で勝訴判決が出ることによって、初めて発信者情報(名前・住所)が判明するのです。
発信者に削除請求書送付・削除請求裁判・損害賠償請求などを行うことで書き込みが削除できる
発信者情報開示請求訴訟によって発信者の身元が判明しても、悪質な投稿が削除されていない場合には、発信者に対して削除請求書送付・削除請求裁判・損害賠償請求などを行うことで初めて書き込みの削除が可能です。
ネット上の悪質な書き込みを削除するためには、多くの手続きや裁判を経る必要があることを覚えておいてください。
ネット上の悪質な書き込みは損害賠償請求ができる
ネット上の悪質な書き込みは、違法性があれば損害賠償を請求できます。
悪質な発信者に対して損害賠償請求を行うことは、再発防止の観点からも有効な手段に成り得るため、前向きに検討してみてください。
相手が特定できていないと損害賠償請求できない
悪質な書き込みを行った発信者を特定できていなければ、当然ですが損害賠償請求はできません。
そのため、完全匿名の掲示板やSNSの投稿などで、個人の特定が困難な場合には、前述した発信者情報開示請求を行なって、発信者を特定する必要があります。
テラスハウスの木村花さんの事件で損害賠償請求が行われている
テラスハウスの木村花さんの事件で、Twitterに「あんたの死でみんな幸せになったよ、ありがとう」という投稿をした長野県の男性に対して、損害賠償請求が行われました。
この裁判では、東京地裁が投稿を行った男性に対して、「慰謝料50万円と調査にかかった費用約74万円を合わせた賠償額約129万円」の支払いを命じています。
この事件のように、損害賠償が認められる事例が増えてきているため、被害に遭っている方は決して諦めないようにしてください。
ネット上の悪質な書き込みは罪に問える
ネット上の悪質な書き込みは、損害賠償請求だけでなく、罪に問うことが可能です。
具体的には、以下の4つの罪に問える可能性があります。
罪状 | 法律 | 刑罰 |
脅迫罪 | 刑法第222条 | 罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
侮辱罪 | 刑法第231条 | 拘留または科料 |
業務妨害罪 | 刑法第233条 | 罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
名誉毀損罪 | 刑法第230条 | 罰則は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です |
出典:e-Gov法令検索 刑法
当然ですが、悪質な書き込みの内容によって、どの罪が問えるかが異なります。
罪を問いたい場合には、警察に相談するようにしてください。
警察になかなか理解して頂けないというような場合は、弁護士に依頼して刑事告訴をしてもらうとよいでしょう。
ネット上の書き込みで削除依頼や損害賠償請求するときの注意点
ネット上の書き込みを削除依頼する場合や、損害賠償請求をする場合は、注意点について理解しておくことをおすすめします。
注意点を理解していないことで、書き込みの削除がスムーズにできない事態になりかねないためです。
このため、ここでは、ネット上の書き込みで削除依頼や損害賠償請求する際の注意点について、詳しく解説していきます。
削除依頼をする際に書き込みの違反内容を明確にする
悪質な書き込みの削除依頼する際は、書き込みの違反内容を明確にしましょう。
書き込まれた内容が規約違反をしていない場合や、名誉権・プライバシー権・著作権・商標権を侵害していない場合は、書き込みを削除できない可能性があるためです。
そのため、書き込みのどの部分が規約に違反しており、権利や利益を侵害しているかを説明できるようにしておいてください。
発信者情報開示請求や損害賠償請求は個人でもできるがおすすめしない
発信者情報開示請求や損害賠償請求は、個人でもできますが、おすすめしません。
専門的な知識が必要なうえに、個人では時間と手間がかかりすぎるので、日常生活に支障をきたす可能性があるためです。
このため、専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
削除依頼を代理で行ってくれる代行業者には悪質な業者が存在する
インターネットで「誹謗中傷 削除」などのキーワードで検索していると、誹謗中傷を削除してくれる代行業者が出てきます。
しかし、そういった代行業者は弁護士法に違反している可能性があるため、注意が必要です。
本来、本人の代わりに悪質な書き込みの削除依頼を行うためには、弁護士資格を有している必要があります。
しかし、弁護士が所属していない代行業者も存在し、そういった業者に依頼してしまうと、高額な費用を請求されるといったトラブルに巻き込まれる可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
誹謗中傷の被害に遭っている方の中には、「ネット上の悪質な書き込みを削除したい」と悩んでいる人も少なくありません。
問い合わせフォームから削除依頼をしても、削除されずに途方に暮れている人や、発信者情報開示請求をして書き込みを削除しようとして、煩雑な法律的な手続きで挫折してしまう人も多いです。
このため、この記事では、悪質な書き込みを削除する方法や注意点について詳しく解説してきました。
悪質な書き込みを削除したいと悩んでいるなら、この記事を参考にしてみてください。
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