TwitterなどのSNSが普及した現代では、インターネット上で発信した内容に対して、謂れもない暴言や嘘の返信などの誹謗中傷を受けた経験がある方は珍しくありません。
実際、誹謗中傷によってうつ病になったケースや、自殺をしたケースもあり、こういった誹謗中傷は社会問題にもなっています。
また、誹謗中傷を受けている人の中には、「誹謗中傷を受けたけど、どこに相談したら良いのかがわからない」、「誹謗中傷に対して罪に問えるのか」など対処法や解決方法がわからず悩んでいる人も数多いです。
警察に相談しても「証拠が必要」と言われたり、根本的な解決にならないケースも多いためです。
では、誹謗中傷を受けた場合は、どのような対応をとればいいのでしょうか?
おすすめは弁護士に相談する方法になります。弁護士に相談することで、SNSの書き込みを削除してもらえる可能性が高くなることや、損害賠償請求ができることなど、数多くのメリットがあるためです。
この記事では、誹謗中傷の問題やその対処法、弁護士に相談するべき理由について詳しく解説していきます。誹謗中傷問題で悩んでいるなら、この記事を参考にしてみてください。
誹謗中傷とは
誹謗中傷とは、事実ではないことや悪口を言いふらす行為のことです。
例えば、SNSやサイト、掲示板などのインターネット上で事実ではない暴言や悪口を書き込む行為、実際に口頭で暴言などを言う行為も誹謗中傷にあたります。
ちなみに、「誹謗」とは、他人を罵る行為や悪口を言う行為、「中傷」とは、根拠のない嘘を述べる行為のことを指します。
<h3>近年増えているインターネット上での誹謗中傷</h3>
TwitterなどのSNSの普及に伴い、インターネットでの誹謗中傷による被害は増えています。
実際に、総務省が公表している「SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組の大枠について」を確認すると、インターネット上の人権侵犯事件が平成24年には671件だったものが、令和1年には、1,985件まで増加しているのが実情です。
出典:総務省 SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組の大枠について
SNS上の誹謗中傷が増えることで、誹謗中傷が原因の自殺など、社会問題になる事件も発生しています。
例えば、2019年8月に茨城県常磐自動車道で発生した煽り運転事件のデマ情報がSNSで拡散した事例です。
この事件では、煽り運転をした車に同乗していた女性と「サングラスや服装が似ている」というだけで、同乗していた女性であるというデマがSNSで拡散されて、無関係の女性が多くの誹謗中傷を受けました。
出典:産経新聞
SNSなどインターネット上の誹謗中傷が増えている原因
インターネット上の誹謗中傷が増えている一番の原因は、TwitterなどのSNSの普及により、インターネットを利用する人が増えたことです。
しかし、インターネットの利用が増えたことだけが原因で、誹謗中傷の投稿が増えたわけではありません。SNS上で誹謗中傷が増える他の原因として、以下の3つが考えられます。
- 実名ではなくハンドルネームで投稿できる匿名性の高さ
- 噂を信じて間違いを正してやるという間違った正義感
- 自分の投稿を相手が受け止めているという認識を持たない想像力の乏しさ
上記のように、対面での誹謗中傷と違って相手が見えないことで、普段の自分では言わないことをSNSで投稿して誹謗中傷しているケースが多く、誹謗中傷したという自覚がないままに投稿している人も多いです。
SNSでの誹謗中傷は罪に問える
SNSでの誹謗中傷をされた際に、誹謗中傷をした相手に罪を問うことは可能です。問える可能性がある罪は、主に以下の4つになります。
罪状 | 内容 | 法律 | 刑罰 |
脅迫罪 | 相手の生命・身体・自由・名誉・財産に対して危害を加える旨を告知した | 刑法第222条 | 罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
侮辱罪 | 事実の摘示がないのに、公然と人を侮辱した | 刑法第231条 | 拘留または科料 |
業務妨害罪 | 虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した | 刑法第233条 | 罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
名誉毀損罪 | 公然と事実を摘示して相手の社会的名誉をおとしめた | 刑法第230条 | 罰則は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です |
出典:e-Gov法令検索 刑法
上記のどの罪に問えるかは、誹謗中傷の内容によって異なりますが、被害者になった場合は泣き寝入りする必要はありません。
誹謗中傷を受けた場合は警察に相談するようにしましょう。
また、刑事罰だけでなく民事上不法行為に基づく損害賠償請求も出来ます。
誹謗中傷により精神的苦痛などの実質的な被害を受けた場合は、民法709条の民法上の不法行為に該当するため、民法710常に規定されている損害賠償請求が可能です。
出典:e-Gov法令検索 民法
実際に支払い命令が出ている事例も多いので、被害を受けている場合は、弁護士に相談するようにしてください。
SNSでの誹謗中傷で罪に問われたケース
SNSでの誹謗中傷で罪に問われた実際の事例を紹介します。
2020年5月に人気テレビ番組テラスハウスに出演していた木村花さんが、SNS上で誹謗中傷されたことにより自殺した事件です。
この事件では、木村花さんが番組内での言動に対して、SNS上で「早く消えてくれよ」や、「吐き気がする」などの書き込みがされ、木村さんは自殺に追い込まれました。
事件が発生した当初は、報道でも大きく取り上げられ社会問題になっていたので、覚えている人も多いと思います。
実際にこの事件で2人が書類送検されており、2021年に侮辱罪で刑事処分を受けました。しかし、この侮辱罪は誹謗中傷で問える罪の中でも最も軽い罪になります。
出典:東京新聞
容疑者2人とも有罪判決は受けたが科料9,000円と非常に軽い
前述したように書類送検された2人に適用された侮辱罪は非常に軽い罪になります。そのため、略式命令で科料9,000円に留まりました。この科料とは刑罰の中で最も軽く、1万円以下の罰金と規定されている罪です。
ただし、木村花さんの母親である響子さんが長野県の男性を訴えた裁判では、東京地裁が男性に対し慰謝料50万円と発信者情報開示の費用を合わせた計129万2000円の支払いを命じています。
このことからも、刑事罰よりも民事上不法行為に基づく損害賠償請求のほうが重いと、感じざるを得ません。
出典:日経新聞
SNSでの誹謗中傷は厳罰化するべき
SNSの誹謗中傷による自殺は、この木村花さん以外にも発生しています。人が亡くなるまで追い込むような事件であるのに、科料9,000円で済ませるのは非常に問題です。
厳罰化がされなければ、SNS上の誹謗中傷も減らず、同様の事件がなくなることはありません。
このような悲しい事件を防ぐためにも、早急に厳罰化できるような体制を整えるとともに、誹謗中傷をした人を検挙しやすい法整備を行う必要があります。
SNSでの誹謗中傷に対する対処法
SNSで誹謗中傷された場合に取るべき対応として、以下の流れがおすすめです。
- 誹謗中傷の証拠を押さえる
- TwitterなどのSNSの運営会社に誹謗中傷の削除依頼を行う
- SNSの運営会社に誹謗中傷をした人の個人情報開示を要求する
- 刑事罰に問いたい場合は警察に相談する
- 内容証明を送付し損害賠償請求をする
- 民事訴訟を起こす
上記は誹謗中傷に対して、具体的な行動する場合の対処法になります。他にも、「無視をする」や「返信をして内容を否定する」といった方法もありますが、おすすめはしません。
無視をしても誹謗中傷が止まるわけではありませんし、返信して否定して場合には、より激しい誹謗中傷をしてくる可能性が高いためです。
誹謗中傷の公的な相談先
誹謗中傷の対処法を1人で行うのは不安という人は少なくありません。
そのため、ここでは無料でアドバイスしてもらえる公的な相談先を紹介します。
インターネット人権相談受付窓口
おすすめは法務省が設置している「インターネット人権相談受付窓口」です。
法務省の「インターネット人権相談受付窓口」からSNSの誹謗中傷の内容や個人情報を記入して送信すると、最寄りの法務局から後日、メールや電話、または面談によって相談内容について回答してくれます。
具体的には、関係機関の紹介や法律上の助言などを行なってくれます。相手が判明している場合には、加害者に対して改善の要求なども行なってくれますが、SNSの誹謗中傷は相手が判明していないことが多く、助言にとどまる場合が多いです。
サイバー犯罪相談窓口
各都道府県警察本部に設置されている警察署の「サイバー犯罪相談窓口」でも、電話やメールで誹謗中傷の相談をすることが可能です。
メールで相談した場合は基本的にメールで回答してくれますが、内容によっては電話をする場合もあるため、相談する際は「氏名や住所などの個人情報」の記載が必要になります。
なお、サイバー犯罪相談窓口も他の公的な相談先と同様に、SNSの誹謗中傷には助言だけにとどまることが多いです。
公的な相談先では解決しないことも多い
法務省のインターネット人権相談受付窓口などの公的な相談先は、言論の自由との兼ね合いもあり、解決できないことも多いです。
したがって、助言をしてくれるため精神的には軽くなりますが、根本的な解決にはなりません。
このため、相談後でも誹謗中傷に悩まされる方が多く、誹謗中傷問題から解放されるには根本から解決することが重要になります。
誹謗中傷をスムーズに解決するなら弁護士への相談がおすすめ
誹謗中傷を根本的に解決するためには、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に相談することで、解決方法は複数見つかります。
例えば、民法上の不法行為による損害賠償請求を行うことや、SNSの運営会社に誹謗中傷をした人の個人情報開示を要求することなどです。
ご自身でも行うことはできなくもないですが、手続きが複雑なうえに手間と時間がかかり、望んだ結果が得られない可能性があるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に相談するメリット
SNSなどのインターネット上での誹謗中傷を解決するために、弁護士に相談する最大のメリットは、望んだ結果を得られる可能性が高いことです。
さらに、専門家である弁護士に相談することで、適切な対応をしてくれるため、精神的にも楽になります。
ただし、どの弁護士に相談しても良いわけではありません。SNSでの誹謗中傷事案に強い弁護士に相談する必要があります。
SNSの誹謗中傷の事案に強い弁護士に相談しないと、適切な対応がされずに望んだ結果が得られない可能性が高いためです。
このため、弁護士に依頼する場合は、法律事務所のホームページを確認して、誹謗中傷問題への対応が得意かどうかを確認するようにしましょう。
SNSの運営している会社が誹謗中傷の削除に対応してくれるケースが多い
弁護士が間に入った方が、運営会社が誹謗中傷の削除に応じてくれる可能性が高くなります。
一方で、一般人が削除要求をしても後回しにされる可能性が高く、削除に応じてくれない可能性も少なくありません。
しかも、仮に削除に応じてくれない場合でも、仮処分申請することで裁判所から削除命令を出してもらうことができます。
そのため、弁護士に依頼することで、インターネット上から誹謗中傷を完全に削除することを期待することが可能です。
個人情報開示が認められるケースが多い
誹謗中傷の投稿者を特定するためには「発信者情報開示請求」を行う必要がありますが、この制度では投稿者に拒否権があるため、拒否されるケースも珍しくありません。
実際に、木村花さんの事件でも、警察が200アカウントによる書き込みを誹謗中傷にあたるとして、Twitter社に開示請求を行いましたが、実際に個人が特定できて逮捕できたのは2人だけです。
出典:文春オンライン
このことからもわかるとおり、警察であっても個人情報の開示のハードルが高く、個人が開示請求をしても開示してくれる可能性は高くありません。
しかし、弁護士から請求することで、個人で請求するよりも拒否しにくくなります。仮に開示請求が拒否されても、仮処分申請することで、情報提供をうけることが可能です。
内容証明や民事訴訟で損害賠償請求ができる
内容証明の送付や民事訴訟の手続きは、知識さえあれば自分自身で行うことが可能です。
ただし、相当の法律の知識がないと、望んだ結果を得ることは容易ではありません。
もちろん、それは弁護士であっても同じで、SNSの誹謗中傷についての専門的な知識がないと、最良の結果を出すことは難しいです。
したがって、望んだ結果を得るためには、誹謗中傷問題に強い弁護士に依頼するようにしましょう。
日常生活や仕事に専念できる
内容証明の送付や民事訴訟手続き、誹謗中傷の削除要求などは、非常に複雑であるため、法律の素人が1人で行うのは容易ではありません。それらの手続きを自分でやる場合は、手間と時間がかかり、日常生活や仕事に支障が出る可能性が高いです。
例えば、平日日中に連絡の返信をする必要があるケースや、裁判所に行く必要があるケースもあります。さらに、書類の作成には時間がかかるため、プライベートの時間もなくなり、寝不足になって仕事に集中できなくなる可能性も高いです。
このため、内容証明の送付や民事訴訟手続き、誹謗中傷の削除要求などを行う場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。依頼することで、こういった煩雑な手続きを代わりに行なってくれ、通常どおりの日常生活や仕事を送ることが可能です。
まとめ:誹謗中傷に悩んでいるなら弁護士へ相談するのがおすすめ
SNSでの誹謗中傷で心を痛めている人や悩みを抱えている人の中には、誹謗中傷に対してどういった対応をすれば良いのかがわからず、悩んでいる人も少なくありません。
「誹謗中傷の書き込みを削除できること」や、「書き込まれた誹謗中傷に対して罪に問える」ことを知らなかったり、罪に問えることを知っていったとしても、煩雑な法律的な手続きなどのハードルに負けて泣き寝入りする人も多いためです。
しかし、泣き寝入りはおすすめできません。泣き寝入りしてしまうことで、結果的に誹謗中傷が増え続ける可能性があります。
そのため、誹謗中傷の問題で悩んでいるなら、弁護士に依頼することがおすすめです。依頼することで、誹謗中傷に対して適切な手続きを代行してくれるだけでなく、納得のいく結果を得られるように尽力してくれます。
この記事では、誹謗中傷の問題やその対処法、弁護士に相談するべき理由について詳しく解説しているので、誹謗中傷問題で悩んでいるのなら、この記事を参考に弁護士に相談するようにしてください。
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